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山岳ライター小林千穂さん 熊野古道伊勢路ブログ

【番外編】
熊野古道センターと夢古道おわせ・ツヅラト峠と栃原〜三瀬谷

尾鷲まで歩いてきたところで仕事のために一時山梨へ帰るのですがその日、午前中に尾鷲にある三重県立熊野古道センターに行ってきました。

熊野古道センターは熊野古道が世界遺産に登録されたことを記念して平成19年にオープンした施設。
熊野古道やその周辺地域の自然や歴史、文化などを知れるビジターセンターです。
古道に関する展示を見たいと思って行ったのですが、
なんと〜!

センターのみなさんが大きな横断幕を持って迎えてくださるというサプライズ!
びっくりしました。
そして、本当にうれしかったです。
熊野古道センターのみなさんどうもありがとうございました。

熊野古道センターは尾鷲ヒノキをふんだんに使った木造の建物なのだそうです。
展示パネルだけでなく、映像でも古道のことを知れるように工夫されています。
なかでも直径3mの紀伊半島地形模型に映し出されるプログラムがおもしろかったです。

ミニチュアジオラマで伊勢路を象徴するシーンを再現したものも旅人や宿などの様子がよくわかってよかったです。
よく見るとユーモラスなんですよね。

私が行ったときは「尾鷲林業物語」という企画展をやっていました(11月19日で終了)。

尾鷲が林業でもっとも栄えたのは明治時代から昭和初めにかけて。
大台、大峰の山を越えて木を運び出すためにロープウェイ(架空索道)、森林鉄道が山奥まで作られました。
明治34年には丸太だけでも22万6900本ものスギ、ヒノキが尾鷲港から積み出されたんですって。

そういえば、大峰の山を歩いたときにトロッコのレール跡を見たことを思い出しました。
そこを通った木も尾鷲へ運ばれたのかもしれないですね。
あまり時間がなかったけれどもっとじっくり見たいと思うぐらいいい企画展でした。

熊野古道センターを出て、すぐ上にある「夢古道おわせ」に行ってみました。
ここは温泉ではなく、海洋深層水のお湯に入ることができる「夢古道の湯」があります。
尾鷲沖、415mの深さのところから汲み上げた水を使っているんですって。
海洋深層水って聞いただけで女子としては惹かれるものが…。
海洋深層水は普通の海水よりきれいで、ミネラルが豊富だそうです。

露天風呂では酸性、アルカリ性、両方のお湯に入れます。
アルカリ性の方はお湯がやさしく感じました。
海洋深層水としての効果は…
一度ではよくわからなかったけれど保温・保湿性に優れているそうですよ。
近くだったら頻繁に入れるのになぁ。

夢古道おわせではこんなものが売られていました。

まぐろラーメン。
どんな味かよくわからないけどおもしろそうなので、おみやげとしていくつか買って帰りました。

「夢古道おわせ」は「お母ちゃんのランチバイキング」が人気。

地域の食材を利用した素朴なお料理をバイキング形式で楽しめます。
私の1回目のチョイスはこんな感じ。

おからのクッキーとつみれ汁がおいしくておかわりしました。
と、お風呂に入りお腹いっぱいになったところで一度伊勢路を離れ、山梨へ帰ります〜。

後半の旅に続く…。

伊勢路旅、後半のスタートですが、その前に私には歩くべきところがあーる。

それは…
3日目、10月22日に台風で歩けず残したまま先へ進んだ栃原〜三瀬谷の間です。


このあたり。

そして、梅ヶ谷で分かれるもう一方の峠、ツヅラト峠を歩くこと。

↑ここ。

私は内宮を出発して5日目、10月24日に荷坂峠を歩いたのですがその時には通れなかったツヅラト峠もいい道だと聞いたので後半を歩く前に歩いておこう!と思ったのです。
そこで同行してくれているスタッフMうさぎ氏に車でツヅラト峠の登り口まで連れて行ってもらいました。
私のこだわりに付き合ってくれてありがたや〜。

久しぶりに見た伊勢路の旗にテンションがあがります。

ツヅラト峠登り口にある4km道標は

新宮まで102km。
前半で区切った尾鷲では半分以上進んでしまったので数字が増えて(まだいっぱい歩けるようで)うれしい。

ここからツヅラト峠の登りがはじまります。

ツヅラト峠は1.8kmです。

きれいな林の中を登っていきます。
ツヅラト峠という名は道がつづら折れになっていることが由来なのだそう。
でも、登りはそんなにキツくなかったですよ。

林道を横切ってひと登りすると峠に着きました。
この峠は伊勢と紀州の境でもあります。

峠にはりっぱなあずまやがあり、そこからの景色がとってもきれいでした。

見えているのは長島方面でしょうか?
海が近いですね。

ツヅラト峠からの海の景色を見たとき伊勢路に戻ってきた〜!といううれしさが込み上げました。
やっぱりツヅラト峠も歩いてよかった。

峠から下っていったところでマークが書かれている木を発見。

三角の中に「吉」、そして「土井」と書いてあります。
これは木の所有者を示すものなのだそう。
数日前、尾鷲でお屋敷を見せてくれた林業経営の土井さんのところでこれと同じマークを見たのできっと土井さんの会社が管理しているんですね。

尾鷲からはだいぶ離れているけれどふらりと寄った場所とつながってうれしい発見でした。

ツヅラト峠では谷地形のところで道が崩壊するのを防ぐためにつくられた石積みが見られます。

この石積みは野面乱層積みというのだそう。
大雨が降ると、谷に水が流れてそこから道が崩れてしまうのでこうやって補強しているのです。
雨の多い地域ならではの工事ですがたいへんな労力です。

峠を越えてツヅラト花広場まで下りてきました。
ツヅラト峠歩きはここで終了。
今度はまた車で栃原まで戻って台風で歩けなかった栃原〜三瀬谷区間を歩きました。
栃原からの道には「バカ曲がり」という難所(名所)があります。

深い渓谷を行くおもしろい道だというのですがその入口まで来ると…

ええええー!
熊野古道工事中で通行止ですって?
空白区間を歩きに来たのにダメなのかと一瞬、頭が真っ白になりました。
でも諦めるのは早い。

張り紙をよく確認すると高速道路の下をくぐるところだけ通れないことがわかりました。
通り抜けはできないけれど行けるところまで行ってみようということに。

標識に従って急な坂を下っていきました。
するとその先にあったのは、

トンネル?
Mうさぎ氏の話では古道はもともとこの谷のあたりを通っていたけれどあとから紀勢本線や車道が作られ谷の一部が埋められてトンネルが作られたのではないかとのことです。

だからトンネルの中を沢が流れているのですね。
熊野古道にこんなところがあるなんておもしろい!

水が少なければ、何の問題もないのですがこの時は雨のあとで10㎝ぐらいの微妙な深さがあり防水の靴とはいえど、濡らさないように歩くのにドキドキしました。
(Mうさぎ氏はトレランシューズだったので完全水没してへこんでいました。笑)

*水量の多いときは危険なので、歩かないでくださいね。
*トンネルは私がちょうど通れる高さなので背の高い人は中腰になってたぶん苦しいと思う…。

トンネルを出ると沢沿いを少し歩き

この後は普通の山道を行きます。

茶屋跡を過ぎてさらに進むと

工事中の橋が見えて来ました。

そして「馬鹿曲橋」に到着。

その先は看板にあったように通行止となっています。
なので来た道を引き返します。

もちろん、あのトンネルを再び通って。

*私が行ったときはよくわからなかったのですが茶屋の手前から工事区間を巻く迂回路が作られているようです。
*工事は2018年2月下旬までの予定だそうです。

入口に戻って迂回路を行き先へ進みました。
神瀬という集落に入る手前から旧街道に入ると多種神祠(たしゅしんし)という珍しい祠がありました。

左から庚申、津島天王、皇大神宮、山之神の4柱が並んで祀られています。
うん?
「山之神」のところだけ祠の横に何かが置いてあるとじーっと見てみたら…

あら、
山の神さまが好きだというごにょごにょごにょ。。。
山の神といっしょに祀られているのははじめて見たかもしれません。

この先で猿木坂に入ります。

竹林を抜けて

沢を渡ると

煉瓦造りの眼鏡橋が見えます。
メガネというけれどアーチはひとつしか見えないなぁと不思議に思ったら、その答えが近くの案内板に書いてありました。
この橋は明治40年に造られ、国道として多くの往来があったそうです。
そのころは2つのアーチがあったのですがその後に線路が造られたのでひとつが埋没してしまったそう。
それで今はひとつしかないんですね。

猿木坂を出るとお茶畑が広がっていました。

そして熊野古道は再び山道へ。

鷹狩りに来た殿様が休んだという殿様井戸を見てさらに歩くと

行き倒れ墓碑の案内が。

行ってみると古い墓碑がありました。
昔は伊勢路を巡礼中に疲労や病気などで亡くなる方もいました。
これは、志半ばに亡くなった人を弔ったものだそうです。

山道を出ると再び広いお茶畑。
そうか、このあたりはお茶の産地でしたね。

踏切で紀勢本線を渡り

旧街道を進みます。

南無阿弥陀と書かれた江戸時代の石碑と常夜燈を見て定峠という女鬼坂峠を越えて2番目の小さな峠の入口までやってきました。

が… 

あらら、まさかの通行止。
国道へ戻って、通行止区間を迂回しました。
そして反対側から通行止区間へ行ってみたら

こんな感じ。
台風の大雨で道が一部、崩壊してしまったようです。
しばらく定峠は通れないかもしれないですね。

定峠を越えたところに八柱神社があります。
ここからは国道42号と旧街道の舗装路が続きました。

そして暗くなるころ道の駅「奥伊勢おおだい」に着きました。
伊勢路旅3日目にみかんの詰め放題をやったところです。

ここまできてやっと伊勢路前半の道がつながりました。
この日は変則的な動きになりましたが残した区間を歩けてスッキリした気持ちで後半に行けます。

では、次は尾鷲からの後半の旅をいっしょにお楽しみください。

まだまだ続くよ…。