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山岳ライター小林千穂さん 熊野古道伊勢路ブログ

【8日目】
尾鷲〜八木山峠〜賀田(距離約15.0km)

歩行距離:
約20.0km
行動時間:
約7時間50分
  • ※歩行距離はGPSログによるものです。いろいろ寄り道したところも計測されていますので、実際の距離とは異なります。
  • ※行動時間は歩行時間だけでなく、昼食や休憩、寄り道した時間も含みます。

前半のコースを全部歩きこの日は尾鷲からスタートです。
尾鷲市街から八鬼山への入口へ向かうと尾鷲節の道標歌碑があります。

尾鷲節は八鬼山を隔てた三木里の庄屋の娘と、矢浜村の宮大工の弟子との悲恋を唄ったものだそう。
「八鬼山を鍬でならして通わせる」という歌詞がせつないです。
そう、尾鷲からの後半はいきなり八鬼山(標高627m)を越える伊勢路最大の難所からスタートです。

大きな石油タンクがある工場の横を通り

八鬼山の登り口へ。
駐車場とトイレがありました。

その向かい側が八鬼山の入口。

新宮まで残り62kmになりました。

古道に入ると例の100m道標があります。

01/63。
ろくじゅうさん〜!
八鬼山は6.3kmもあるんですね。
元気に歩くぞー。

便石山を見ながら進み

石畳の道を行きます。

馬越峠より自然に馴染んだ感じの道です。
このあたりの石畳は江戸時代につくられたと考えられているそう。

ここにも行き倒れ巡礼碑がありました。
案内板によると巡礼者には体を患っている人も多く、西国一の難所である、
この八鬼山で力尽き命を落とす人もいたそうです。
体調の悪い人がいると村人は医者に見せて看病し、それでも不幸にして命を落としてしまった場合、その人の国元へ訃報を出し、地元民の負担で火葬して、手厚く葬ったとのこと。
その後は初七日の法要も怠らなかったそうです。
この供養塔は江戸末期に茨城県筑波郡伊奈町(今のつくばみらい市)から来た武兵衛さんのものです。
今もお酒が供えられ、大事にされています。
八鬼山にはほかに長崎、群馬などから来た人、4基の供養塔があるんですって。

しばらく行くと籠立場に着きました。

ここは紀州藩主(お殿さま)が峠越えをしたとき籠を休ませたところだそうです。

林道に出たら、舗装路ではなく石段の方へ進みます。

ほぼ1年前ですが「本日」ってリアル〜。
クリスマス・イブに来るのはサンタクロースだけにしてほしいです。

八鬼山はここから急坂になります。
石畳の道をぐんぐん登っていきますよ。

そして七曲がりの難所にさしかかりました。

つづら折れの坂道がずっと続きます。

でも、道脇にはお地蔵さまがたくさん置かれていて見守ってくれているよう。
やさしい表情に励まされます。

桜茶屋一里塚の石碑を見て

蓮華石と烏帽子石を過ぎます。
またお地蔵さまが。

八鬼山のお地蔵さまは親しみのわく表情です。
持っているのはモップ?と思ったら(そんなわけない)錫杖ですね。

またまた急坂を登ると

九木峠に着きました。
ここを下っていくと九鬼の町へ行きますが八鬼山は右へ、さらに登ります。
登りがつらいときは…

お地蔵さまを拝みながらひと休み。

そして荒神堂まで来ました。
ここにある日輪寺は修験者が開き1300年もの歴史を持つそうです。

その後もまだまだ登り

No.36、半分を過ぎました。

八鬼山山頂の直下に三木峠茶屋跡があります。

このすぐ上が八鬼山山頂。
八鬼山を登りきりました〜。

山頂標識は道から少し入ったところにあります。
Mうさぎさんが教えてくれたので行けましたが、道標が倒れてしまっているようで知らないと通り過ぎてしまうかもしれません。
この先のさくらの森広場はとっても気持ちのいい場所。

ここからは九鬼水軍で有名な九鬼の町がよく見えます。

九鬼水軍は戦国時代の海上戦で活躍したのですよね。
入り組んだ入江の内側、外海からは見えないところに集落を作ったのでしょうか?
九鬼といえば三重県のスイーツ男子Yさんが九鬼名物「九鬼水軍虎の巻」を差し入れしてくれました。

モチモチのカステラ生地でカスタードクリームが巻かれていておいしかったです。
これは予約しておかないと買えないのだとか。
九鬼まで買いに行ってくれてありがとうございました。
そして、ごちそうさま。

ところで八鬼とか九鬼とか、鬼がつく地名がこの辺りには多いですね。
尾鷲の方に聞いたところ、「鬼」というのは修験者のことでその行場が地名となって残っているそうです。
九鬼というのは9番目に開かれた行場なんですって。

さくらの森広場をあとにして八鬼山を下ります。

登りの尾鷲側はずっと針葉樹の植林帯だったのですが山の反対側は照葉樹林(ウバメガシ?)のところもありました。
気持ちのいい道でしたよ。

下っていくとまた植林帯になりますがそれもまたきれいでした。

八鬼山を歩ききって

新宮まで54kmのところまで来ました。

石の道を歩いていくと

だんだん開けてきて

紀勢本線を渡った先で

海が見えてきます。

八鬼山を越えたけどこの日はまだ三木峠、羽後峠、あと2つの越えが待っています。
がんばって歩くよ〜!

伊勢路、最大の難所である八鬼山に登り、三木里の海辺までやってきました。
標高差600m以上のアップダウンはなかなかキツかったです。

でも、樹林帯を歩いたあとに開放的な海の景色を楽しめるのが伊勢路のいいところ。

沓川を渡って

三木里の集落内を歩きます。

八十川を越えたら

国道311号を少し歩き

ヨコネ道という山道に入ります。
ヨコネ道は長く埋もれていたのですが近年、地元の方たちによって掘り出され通れるようになった古道です。

国道より少し上に続く道で多少のアップダウンはありますが

道の雰囲気がいいので舗装路を歩くよりおすすめです。

途中には

石積みの形がはっきり残っている炭焼窯跡(写真左上)があったり

入江を眺められるポイントも。

ヨコネ道が終わると一度国道に出てすぐに三木峠に入ります。

この峠は800mと短いですが歩きごたえはあります。
尾鷲から八鬼山を越えたあと、ヨコネ道、三木峠、羽後峠となかなかの峠越えが続くので昔の旅人はこの区間を敬遠して三木浦から曽根浦まで舟に乗って海を渡ったそうです。

向こうの山の鞍部が三木峠でしょうか?

とっても見晴らしがよく賀田湾の先に太平洋が見えています。

振り返ると三木里がだいぶ遠くなりました。

三木峠に到着。

峠から左へ行ったところの展望地でひと休みしました。

ここからは次の羽後峠をめざします。

猪垣の横を通り

古江長の民家の間をすり抜けて

また海辺に出ました。

山道に入るので、ここが羽後峠入口かと思ったらまだまだ先なんですって。

石垣で区切られた畑(?)の間を歩いて

シンコン橋を渡り

石垣沿いに進みます。

このあたりはずっと石積みが作られています。
古い時代の遺跡を探検しているみたいでした。
イノシシが畑などを荒らさないようにとつくられた石積みなのだそう。
イノシシの食害に苦しむ人々の壮絶な戦いの跡なのですね。

いったいどのくらいの年月をかけてつくられたものでしょうか?

小さな沢を渡り

さらに石垣の間を進むと

祠が見えてきました。
手を合わせていこうと思ったら…

あ〜ら、びっくり。
山の神さまです。

海の見える場所を過ぎると

やっと羽後峠の登り口に着きました。
ここまでが長かった…。

でも登りはじめると

すぐに峠に着きます。

峠から下っていった先に

秋葉山本宮は私のふるさと、静岡の西部にあり秋葉神社に火伏せの神さまが祀られています。
実家に帰ったときよく両親と登る山なんですよ。
秋葉信仰は、ここにも伝わっているのですね。

ここでツツジの花を見つけました。
秋に咲くとはめずらしいですね。

羽後峠を越えれば今日のゴール、賀田はもうすぐ。

新宮まで残り46kmとなりました。

羽後峠を下ったところで秋葉山を見てさらに下ると、賀田羽根の五輪塔があります。

五輪塔はもともと仏教の思想を表したものだそうですが、鎌倉時代以降、供養や墓石として用いられるようになりました。
これは寛永18年(1641)と刻まれていて江戸時代初期のもの。
戒名に慈長道喜禅定門と書かれていることから五輪塔手前にあった秋葉山を開山したか中興(復興)させた修験者のものだと考えられています。
この修験者、遠州の秋葉山でも修行したのでしょうか?

古道を出ると明るい賀田の町に出ました。

古川を渡る手前に商店があります。
このあたりでは貴重なお店。

古川橋を渡って、賀田駅へ向かって進みます。

賀田駅の先で今日の宿、尾鷲シーサイドビューの看板が見えてきました。

この茶色い建物がシーサイドビュー。
もうちょっとだぁ〜。

道脇に首なし地蔵が祀られていました。
江戸後期にはすでに首がなかったそう。
首から上の病が治ると信じられ今でも大切にされています。

シーサイドビューの入口まで来ましたがチェックインの前に気になっていたところへ行ってみました。

すぐ近くにある飛鳥(あすか)神社です。
この神社は巨樹が何本も茂り一見の価値があります。
その大きさは…

ドーン!

すごいでしょ?
私がミニチュアみたい。
もともと小さいか(笑)。
写真左がクスノキ、右がスギですって。
樹齢1000年を超えるそうです。
このあたりからは弥生式土器が発掘されているので古代からここは祈りの場だったのでしょうね。
ほかにも四本杉などりっぱな巨樹がありますので近くに来たらぜひ寄ってみてください。

境内も静かで心地よい場所でした。

神社の裏にはこれまた大きなクスノキがあります。
こちらは幹回り11.5mで、三重県で第3位の大きさだそうです。
大迫力でした。

飛鳥神社にお参りしシーサイドビューに入りました。

ここも海の眺めがよくてとってもいいお宿でした。

お部屋の窓からの眺めはこんな感じ。
賀田湾の入江の奥の方にあるので海といっても湖のように穏やかです。
大きな窓が開放的でリラックスできました。
夕食をお部屋まで運んでもらえるのもよかったです。

お風呂も大きなガラス張りでこんな感じの大展望です。

誰もいない脱衣所で湯上りに、ぐで〜っとくつろぎ幸せ時間を過ごしたけれどあとから気づいたら外は海なので、結構頻繁に漁船が通るのよね。
だいじょうぶだったかな…。

脚は疲れても毎日、大充実の日々を過ごしています。

9日目もお楽しみに〜。